■今ここにいるぼくらは/川端裕人(集英社)
センシティブに描く、傑作少年小説! 里山に虫を追い、星空を眺め、川は冒険の舞台だった。友達関係に悩み、未来に思いを馳せた。だけど、心にぽっかり開いた穴が時々囁きかけてくる少年 博士(ひろし)を主人公に描く、心にやさしく響く少年小説。「川・少年小説」というニューウェーブからの贈り物。 主人公が小学1年から6年生の間に体験した事柄を描いた7つの短編からなる連作小説。 「川の名前」がよかったと言う人にはオススメ。ただ、一歩退いた目線で語られているために感情移入しづらく、ちょっと文体が独り言っぽいのが気になるかも。 特に印象に残ったのは近所のガキ大将と川の源流を探しに行く「ムルチと、川を遡る」と引っ越して早々馬鹿にされ、自分の居場所に悩む「影法師の長さが、すこし違う」の2編。 自分の場合は遡るのではなく河口へだったけれど、主人公と同じようなことをした思い出があって、「ムルチと〜」は忘れていたあの時のドキドキを思い出した。幼い頃は家の周りが世界の全てで、ほんの少しその世界を離れることさえもが大冒険だったんだよね。 一方「影法師の〜」は著者曰く本書のテーマである「ここは自分の居場所じゃない」という感覚を主人公の葛藤と共に綴っている名編。自分がいる場所に不確かな不安を感じている人は何かしら得られるのではないかと思う。とりあえずこの章だけでも読むことをオススメします。 全編通して何処か少年時代の原風景が浮かび、ノスタルジックな気持ちにさせてくれる一冊。自分の居場所を探している全てのひとたちへ。 いつかきみが出会うものと、ぼくがこれまでに出会ったもの。 それらは、つながっているような気がする。 すべての川を束ねる海まで下らなくても、ぼくたちは同じ水脈の中にいるんだからね。 ぼくたちは一人ぼっちだ。それも悪くない。 川端裕人:公式ブログ
by phlogiston-76
| 2005-10-13 20:51
| BOOK
|
ファン申請 |
||